8月23日から25日にかけて行われた第15回全日本大学フットサル大会は、多摩大学の初優勝という結果で終わった。令和初の大学フットサル大会を終えて、大会を視察した前立川・府中アスレティックFC監督の谷本俊介氏(現立川・府中TD)と大会を取材したFutsalXの河合拓が大会を振り返った。
河合 谷本さんが大学選手権を見たのは、何回目ですか?
谷本 生で見たのは初めてですね。だから、すごく新鮮でした。
河合 今回、大会を視察した理由と感想を教えてください。
谷本 理由は、JFA(日本サッカー協会)のインストラクターとして大会視察の一環です。感想としては、競技レベルなどは置いておいて、ほとんどの人にとって大事な最後の学生生活になる大学の4年間の一部を、フットサルに投じてくれている子たちが、こんなにも多くいることに、すごく幸せな気持ち、嬉しい気持ちになりましたね。
河合 それはありますね。彼らのほとんどは普段から練習を積み重ねて、フットサルのこの大会に出場しているわけですからね。今大会はほとんどがフットサルのチームで、サッカー部は3チームだけでしたからね。
谷本 そうですね。第2の印象としては、今、言われたフットサル部として活動していて、監督がいるチームだけではなく、いないチームでも自分たちなりにフットサルを勉強して、技術、戦術的なことができるチームが僕の持っていた印象以上に多かったことです。その象徴的なチームが、3位決定戦を戦った2チームです。
河合 北海道大学エスペランサと東北大学フットサル部ディーグッチですね。
北海道大学エスペランサ
東北大学フットサル部ディーグッチ
谷本 彼らの存在は、非常に大きな存在だったと思いますね。そして3つ目の印象としては、日本フットサルが競技として、より高みを目指していくことを考えると、フットサルにおいての競技性が高かった桐蔭横浜大と多摩大が決勝戦までしっかりと勝ち上がったことが最も良かったと思います。大学フットサルのチームが目指すべきモデルとして、専門的な指導者がいて、意識の高い選手たちがいて、しっかりとした練習環境を持っていることの重要性を両チームが証明してくれました。ですので、決勝戦はフットサルの競技特性がたくさん含まれた素晴らしい試合だったと思いますね。
河合 これまで優勝がなかった多摩大でしたが、ちょっと突出している印象でしたね。
谷本 今回、全チームの代表者にインタビューをしたのですが、多摩大の福角有絋監督にも決勝の前に話を聞きました。そこで分かったのは、練習量が突出して多かったことです。また、専任の監督だけではなく、週に1回、専門のフィジカルコーチとGKコーチが練習に来てくれていると言っていました。歴史としてはそんなに長くはありません。積み重ねていけば、こういうところまで行けるという一つの成功モデルが示されたので、フットサル部がない大学でも本気になって取り組めば、ゼロからでもそこまで行けるという後押しになると思います。
河合 その環境は、かなり恵まれていますね。多摩大にはU-18フットサル選手権に出場した選手たちも、非常に多く在籍しています。フットサルの全国大会に出場した選手を獲得できているチームが、上位に来るのも傾向になりつつあるのではないでしょうか。その一方で、サッカー部のチームにも、やはり面白いタレントはいました。今回、U-18フットサル選手権と大学選手権、ともにフットサルチームが制しましたが、それが今年起きた要因として、何か考えられることはありますか?
▼優勝した多摩大には聖和学園出身の金須恭弥をはじめ、多くのU-18選手権出場者が在籍
谷本 2つの視点があると思います。一つは、フットサルの専門的な技術・戦術を持ったチームの戦い方において、フットサルのチーム力の質が高まってきたことにあると思います。もう一つは逆の視点でサッカーのチームが今回、勝てなかった要因として、たまたま個人で突出した能力を持つ選手がいなくて、フットサルチームの総合力を上回れなかったのだと思います。過去の例で見るとU-18選手権で矢板中央高が優勝した際には大塚尋斗(U-20フットサル日本代表選手)の存在がありました。そういったフットサルの集団を上回るサッカー界で活躍する突出したタレントを持った選手は残念ながら今年の大会では見当たらなかったと思います。ただ、U-18選手権でも、大学選手権でも、以前に比べてフットサルのエッセンスを少しずつ取り入れようとしているサッカーチームはありましたけど、フットサルチームには遠く及びませんでしたね。
河合 なかには初戦開始目前、ウォーミングアップが終わって用具チェックまでの時間で、選手交代のやり方やバックパスの確認をしているチームもありました。でも、そういうチームは稀有でしたね。U-18選手権では、それこそルールを間違ったことが得点にも影響したサッカーチームがありました。フットサルを知っているか、知っていないか。そこが勝敗に直結するようなことが起きているのは、今年の学生フットサルの特徴に感じます。