【W杯】2016年に起こしたジャイアントキリングの再現を…ブルーノ監督「私はビッグゲームを楽しむタイプ」

【W杯】2016年に起こしたジャイアントキリングの再現を…ブルーノ監督「私はビッグゲームを楽しむタイプ」

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 パラグアイ戦で敗れた後、ミックスゾーンで驚いた。ブルーノ・ガルシア監督は、日本代表の対戦相手がブラジル代表に決まったことを理解していなかったからだ。すでに選手たちは星勘定をしていたのだろう。対戦相手がブラジルに決まったが?という質問に対して、淡々と答えていったが、ブルーノ監督は「それはもう確定なのか?」と、取材陣に逆に聞いてきたのだ。

 状況を理解しながら戦っていなかったことに関しては、どうなのかと思う部分もある。だが、一方でブルーノ・ガルシア監督は、それだけ、目の前の試合の勝利だけを見据える監督なのだろう。そして、その姿勢が実を結んだのが、2016年のAFCフットサル選手権ウズベキスタン2016だ。

 当時、ベトナム代表を率いていたブルーノ監督は、延長戦の末に大会2連覇中の日本をPK戦の末に撃破した。今回、日本は2大会ぶりのW杯出場となったが、その要因を作ったのも、実はブルーノ監督なのだ。

 その後、ブルーノ監督が日本代表監督に就任したが、数人いた候補との面接があったなかで、ブルーノ監督が誰よりも日本代表について熟知しており、熱を持っていたという話を聞いた。その監督が、2016年の出来事に重ねるのが、今回のブラジル代表戦だ。

 ブラジルは、前回の2016年W杯コロンビア大会で、史上最低の結果であるベスト16敗退に終わった。今は、その傷がかさぶたになりかけているところだ。日本が勝てるとすれば、その傷を再び開かせるしかない。

 2016年のアジア選手権、日本はリードを奪いながらも、最終的にはベトナムを突き放せなかった。そして終盤に同点ゴールを浴び、PK戦で涙を呑んでいる。スペイン戦でも先制されながら不屈の闘志を見せて、一時は逆転した日本代表。その後、日本は逆転されたが、今回の試合は逆転負けを喫したら、そこでゲームオーバーとなる。

 5年にわたったブルーノ・ジャパンの集大成の試合を目前に、指揮官が思いを語った。

 以下、オンライン取材でのブルーノ・ガルシア監督の一問一答

JFA 監督からひと言、お願いします。

ブルーノ まずは第一目標であったグループリーグ突破を果たせた達成感は大きいです。そこについては喜んでいます。そして、当初からカレンダー、組み合わせのルールなどを鑑みて、どういう可能性があるか、可能性としてはわかっていたとおりですが、ブラジルという強豪国と対戦できる機会を得たのは素晴らしいことであり、燃えています。また新しい挑戦になりますが、そこに向けてしっかり準備したいと思っています。

SAL ブラジルの印象、どのように戦うべきと考えていますか?

ブルーノ ブラジルはもともとよく知られているチームですし、我々はスカウティングを進めており、最少のディテールまで詰めて分析の仕上げをしています。ブラジル代表は、「代表のなかの代表」です。最も世界でタイトルを取っているチームであり、構成メンバーも世界有数のトップクラブのなかでプレーしているトップチームです。チームとしても、トップですし、構成している選手たちもトップ中のトップという印象を持っています。ですから、強みというのは、たくさん持っていて、非常にパワーのあるチームであることは間違いありません。しかし弱点も当然あります。そこに対して、まず自分たちがやらないといけないのは、自分たちのプレー。自分たちが作ってきたフットサルの形。それを最高レベルで遂行すること。それをやったところからリンクして、弱点であるブラジルのほころびを引き出せる。それがあって、初めて勝機が見えてくると思っています。我々としては最高潮の日を迎えてぶつける。本当にブラジルが絶好調の日であれば、それを止めるのは難しいですが、少しでもゆるみがあったときにこじ開ける。そういう取り組みをする必要があります。

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SAL 通常試合の翌日はリカバリーでしたが、昨日は試合後で移動もありましたが、実戦形式の練習もして負荷をかけていた。これもブラジル戦を見据えて行われたのですか。

ブルーノ 取り組みの違いはあります。リカバリーをして、また準備をして、実践を迎えるという大きな流れは変わりません。しかし、ノックアウトステージとグループステージで背景が違うのが大きな要因です。ノックアウトステージは、まさに次の試合のことしか考える必要がありません。次の試合にいかに臨めるか。それができなければ、大会を終えて家に帰るだけです。そういうシチュエーションですから、本当に毎試合がファイナルです。そういうゲームを迎えるにあたり、回復、準備、そして戦いに向かうフェイズがある。グループステージは、確実に3試合をやることが決まっています。3試合を戦いきることを念頭に置いた準備を、回復リカバリー、準備しないといけません。しかし、今度はファイナルです。次のことを考えるべきではない状況がある。そういう試合の翌日になります。

フリーランス権藤 ブラジルと対戦する相手で「巨大な相手」と話していました。今、どのような心境ですか?

ブルーノ ワクワク感が高いです。非常に楽しみです。こういう場に立って、強い相手と試合をすることでナーバスになる感触は、全く不要ですし、考えても、あまり意味がないことだと思っています。自分はタイプとしても、ビッグゲームを楽しむタイプだと自認してきています。ここまでW杯ベスト16の舞台でブラジルのような国、音楽とフットボールで世界を虜にする魅力を持っている国と戦えることは、そこまで辿り着かないとできません。そこへの満足感もありますし、大きな舞台でブラジルと戦える楽しみな感覚しか、今はありません。

SAL ブルーノ監督は、ベトナムを率いていた時、日本を倒しています。強い相手と戦う時にブルーノ監督の真価は発揮されるかなと思いますが、その辺の自信について教えてください。

ブルーノ いま、質問のなかに合った通りの感覚を持っています。私としては優勝候補になるようなチームを転覆させることはトライをして、やってみてやれた実績を持っています。そこについて、やれるという感触を持っています。状況が似ている今回も、その感触をチーム全体に伝えたい。スポーツは、戦術、技術、フィジカルだけではなく、エモーショナルなものも、すべて含めています。個人のタレントだけで勝ったり、負けたりするものではない。その面でいくと、我々が歴史を変えよう、金色の文字で新しいページに、自分たちの姿を書き記そうというチャレンジ精神、相手にも責任を伴ったゲームをW杯では続きます。そこを考慮しながら、今のシチュエーションで、2016年に起こしたようなことを狙っていきたい。

FutsalX 下剋上の秘訣、下克上を起こすチームに必要なものは何ですか?

ブルーノ まず戦術面からいけば、ゲームプランとしては、我々が活用するプレーモデルのシステムを最高レベルに精度を高く体現することは、必須の要件になります。これは先ほど話した通りです。もう一つは、ボール保持を長くすること。相手はボールを持っていない時間に、それほど強みを持っていません。そこの時間をどれだけ長くできるか。あとはセットプレー。そこで脅威をどれだけできるかは、戦術的なものでのゲームプランになります。戦いには心理面もあります。心理面としては、どうやっていくか。終盤まで当然、スコアは、動いたり動かなかったりする。そこで引き分け、1点差くらいで、競っている状態でゲーム終盤まで引きずり込む。そうすることで心理面で優位性を持てると思っています。そこまでのゲーム展開をしていくことが、重要なポイントになります。

FutsalX その心理面ですが、ブラジルが前回ベスト16で負けているイメージは、序盤は「引き締めよう!」と、プラスに働いても、終盤は「また負ける」と、マイナスにもなると思いますが、どうですか?

ブルーノ まさに、そこです。先ほど話して伝えたかったことは。そういうベスト16の記憶は、ゲームが感情の精度のなかで、戦いながらも進んでいきます。感情面でも戦っていくものなので、そこに空白や黒い穴があったりします。それはビッグチームでも同じこと。そこがブラジルの心理的な空白、スキになると思います。そういう背景もあって、おそらくブラジル代表としては、そんなエピソードを拭いたい。心の空白を埋めて、そこをパワーに、影響が出ないようにしたいところがあると思います。ブラジルとしては勝たないといけない義務があるゲームになります。それに対して私たちは勝ちたい希望、欲求、そこに取り組みの捉え方が違う。相手の義務、心理的な穴,隙、空白がある部分に突け入れる可能性があるのが、終盤の時間帯にもつれこんでわからないゲームにすることだと思っています。そこが先ほどの補足のポイントと重なります。

FutsalX ブラジルの戦い方、8分、6分、6分のセットで戦っていますが、そのメリット、デメリットで感じることはありますか?

ブルーノ 相手がどのようにやって来るか自体は、もちろんわかっています。グループリーグから、フェラオのいるセットは7分以上フェラオが出ていることが頻繁にありました。ほかのセットは短く交代している状況でした。それに対しては軸になる、脅威になるピヴォであることは間違いありません。彼に対して、スペイン戦で我々が見せることができたような支配的なピヴォに対する守備のアクション、そういうものを当てて対抗していくことが必要です。しかし、それを均一に相手がやってこない、均一にやってくるわけではないことを理解しながら取り組むことが必要です。ただ、それよりも自分たちが、どういうプレーができるかを優先することが、このゲームに関しては、非常に大事だと感じています。自分たちが良いプレー、集中力を維持した強度の高いプレー展開をやり続けることができる戦い方を優先したいなと思います。

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