【日本代表】「今回は可能な限り遠く深くまで行く挑戦」「毎試合、主役に」ブルーノ監督が描くW杯の挑戦

【日本代表】「今回は可能な限り遠く深くまで行く挑戦」「毎試合、主役に」ブルーノ監督が描くW杯の挑戦

 優勝、世界一。明確な言葉こそなかったが、ブルーノ・ガルシア監督は、今のフットサル日本代表は、その座を狙えるポテンシャルを秘めていると信じているようだ。

 今回、約1カ月半先に迫ったW杯に、どのような計画をもって準備を進めていくか。W杯への準備に向けて、どのような考えを持っているのか。W杯に向けた最終的な国内での準備が17名で行われている理由、招集した選手たちへの信頼感についてなど、様々なことを焼く1時間にわたって語った。

 なお、オンラインで行われたインタビューのなかではリトアニアにわたってからのプランも説明され、トレーニングマッチの1試合が計画されており、その対戦相手が「アフリカ王者」になることも明かされた。つまり、アンゴラ代表との初戦の前に、日本代表はモロッコ代表と対戦して、調整を行うのだ。

 最高の準備環境が整っている一方で、約1年8カ月、代表での国際試合がなかったチームが、これだけの経験を詰め込むと、コンディションのピーキング面で不安になる。そのあたりについても、ブルーノ監督は、過去の経験上、最適な計画であることを強調している。

以下、オンライン取材でのブルーノ・ガルシア監督のコメント

JFA ここまでを振り返って?

ブルーノ プランニングという意味で少し現状を伝えますと、私たちは一つ目のサイクルに入っています。用語として、私たちは『蓄積期』と呼んでいます。フィジカル的な負荷をかけて、回復を待つような『蓄積』の側面もありますが、戦術面の情報、チームビルディングのベースとなる対応、そういったものを含めた蓄積です。W杯を戦うためのベースづくりの一環と言えます。
 この蓄積期は2つのパートで考えています。今は、国内のパートの真っ最中。このパートの目的は『均質化』という表現が当てはまります。国内の選手であれば、シーズンに入っていて、リーグ戦が中断に入っているインシーズンのコンディションで集まっている状況です。それに対して海外から帰ってきている選手、清水和也、逸見勝利ラファエルは、オフシーズンから入って、立ち上げながら入ってきています。それ以外に負傷からの回復途上の選手もいます。そういう部分を次のフェーズに向けて、様々な面で、コンディションを整え、均質にしていくというテーマで取り組んでいるところです。
 国内での活動は一度、30日で中断して、2日に再開して続いていきますが、最終的に7日までが「蓄積期」になります。

 そこからヨーロッパに移動して、新たなフェーズに入る構成です。ヨーロッパに飛んでからは『移行期』に入ります。蓄積したものを本番に向けて移行させていく。本番で使えるように、こなして、洗練していく時期にしています。そのために8月8日から31日の期間をヨーロッパで過ごします。本番もヨーロッパですが、その行く先では、スペインのガリシア、ポルトガル、最後はスペインのハエンという南部の街で計画的に組んだトレーニングマッチを、様々な代表チームとやっていく。こういう計画を練っています。その対戦相手も本番のグループステージでの対戦となる相手チームとの特性、大陸を意図して、様々な大陸の代表チームとプレーができるように組んでいます。そして、それを通じて洗練ポイント、最後の磨き上げをして本番に向かって行きます。
 8月31日までスペインで過ごす間に、6試合を予定しています。6試合を計画していて、最終的にそのあとW杯が行われるリトアニアに9月2日に入ります。

 リトアニアに行ってからは、蓄積期、移行期に続く『実現期』に入ります。ここでも最後にW杯本戦のグループステージに先立って、最後のトレーニングマッチを組んでいます。9月2日の初戦に入ってから、14日まではリトアニアの地への適応、そして個としても、グループとしても、最適なコンディションで試合を迎えられるように、最後のトレーニングマッチを組んでいます。こういう仕組みで考えています。
 今からヨーロッパに飛んで、本大会までに計7試合を計画しています。これは最後、W杯でファイナルまで行くのと同じ試合数になります。今回、その事前に組むトレーニングマッチではアルゼンチンやスペインといったW杯チャンピオン経験者と現王者、欧州王者のポルトガル、それ以外にもアフリカチャンピオンや北中米代表チーム、そしてアジア代表と、いろいろな特性のスタイルを持ったチームとの対戦を織り交ぜ、万全の計画を伝えています。

SAL 最終メンバーが14名から16名になると報じられているが、現時点で決めっていること、伝えられていることは? 

ブルーノ いま、あなたがたが把握されている情報のレベルは存じませんが、私たちは公式のものとして、インフォームされていると把握しています。他のスポーツもそうですが、コロナ禍の特別な措置として、FIFAから14名の最終リストを16名に広げ、そのうちGKは3名とすること。ただ試合に入る段階でのゲーム登録は14名ということ。2人は試合会場にいるかもしれないが、ベンチ入りはしないというフローになると聞いています。この辺りは非常に現実的な状況に対して、FIFAが賢明な判断をしたと私は考えます。

SAL それによっては最終メンバー選考にも大きな影響があると思いますがいかがですか?

ブルーノ この変更を受けて、私たちとしては事前に考えていたものが、結果的に非常にやりやすくなりました。特に変更することが、ないのです。変更を余儀なくされるような、強いられるようなものがありません。
 もともと国内の合宿を17名で行い、スペインとポルトガル遠征には16名で行く。そして9月2日には14名しかいけないので、14名で行くという計画でした。それが最後のところで欧州遠征に行き、そのままリトアニアに全員で入れることとなった。なので、都合が良い変更だったと思っています。
 また、もう一つ付随して申し上げますと、最終メンバーが14名から16名に増えたのに加えて、負傷が発生した際に補充できるラージリストの登録が、これまで25名だったのが1人増えて26名になりました。つまり、10名のバックアップメンバーがいる状態になっています。

SAL メンバー選考に最大限のリスペクトをもったうえで伺いたいのですが、これまで重要な位置づけにいた仁部屋和弘選手が入っていない理由を話せる範囲でお願いします。

ブルーノ 選手選考は非常に複雑で、難しいものでした。いま、仁部屋選手の名前が出ましたが、彼以外にも最終的な17名のリストに入らなかった選手が、ラージリストにはいます。
 森岡薫、内村俊太、滝田学ら、非常に拮抗した競争をしてきたなかでの決断となりました。この状況を分析するに、2020年から2021年にW杯が延期になった影響もあるでしょう。ある選手には好影響だった一方で、ある選手には時期がマイナスに働いたと思います。
 評価としては代表に来た時の活動だけではなく、クラブでどのようなプレーをしているか、その両方を見てきています。代表としては、ポルトガルでゲームをしますが、それが18カ月ぶりのゲームになります。その時点で最適なメンバーになるだろうと思われるメンバーをあらためて、この期間の延期になったことを見据えながら、判断して、選んできている。もちろん繰り返しになるが、非常に難しい能力の高い選手の集まりであり、拮抗したなかで最終的な決断をとるのが自分の使命なのでそれはやりましたが、そういう背景のなかで苦しみながら、最善、最適のメンバーを選んだつもりです。

JSPORTS これまで19名、20名と多くの選手を招集していたので、今回もメンバーを多く招集してそこから絞るかと思われましたが、17名に絞っています。合宿を取材して、過度な緊張感がなくなり、程よい適度な緊張感のなかで、合宿ができていると感じましたが、それが17名に絞った要因でしょうか?

ブルーノ 国内キャンプで19名呼んできたことは、おっしゃる通りです。これとは別に基準があり、海外遠征の時は16名というのを基準として、これまでもやってきてきました。それがあったことで、19名というのがありました。もう一方、今回17名になった背景には、最後に17名にして、落ち着いて、比較的に競争レベルのストレスを与えるよりもチームに最後のフィルターをかけて、洗練に重きを置く段階に入るので、そのようにしています。
 このことは、6月のキャンプで、「今回を最後に17名に絞る」ということを宣言して、みんなも最後の競争だと理解して臨んだと思っています。そういうことがあるので、端的に言うとおっしゃっていたとおりですが、背景には、そのような計画性を持って、招集人数を変化させていることがあります。

JSPORTS あらためて選んだ17名への信頼を聞かせてください。

ブルーノ 17名の信頼を話す前に、自分の持つ信頼の定義、そして選手選考の際の信頼の定義について、少し話したいと思います。私にとっては「この選手は点を奪えるから」「ゴールを決める可能性が高いから」「守備をさせればボールを奪える可能性が高いから」とか、それができるから信頼が高い、低いという構造では見ていません。代表の最終的に選ばれたメンバーが、どういうレベルで、チームに参加して互いをわかりあってほしいかというと、各人が7試合という本番の戦(いくさ)というふうに呼ぶなら、7回の戦で、各人が自分の命を削ってでも、互いのために、共通の目的のために、身を捧げることができる。そんな犠牲心をもちながら、調子良い選手が調子悪い選手を助ける、カバーしあえる。調子が悪いから苦い顔をするとか、そういうことではなく、みんなが前提を一つにして、この戦を戦い抜く。戦ですので、自分の感覚というよりも、チーム全体のために、自分をささげることのできるメンバーの集まりになってほしいという基準をつくってきました。16名、最後のメンバーは7戦の戦をともに戦う、信頼ができるメンバーになっていると確信している。
 とはいえ、この17名しか信頼できないのかといえば、そうではありません。ラージリストの26名、もっと多くの最高レベルの技術を持った選手たちが、この代表に関わってきました。このなかでも最高レベルで、戦をともに戦っていくのに最適なメンバーの集まりが、この17名の今の時点での信頼となっています。 

FutsalX フィジカル面のスペシャリストではないので伺いたいですが、リトアニア入りの前に6試合を行うことでの疲労はどうでしょうか。久しぶりにもかかわらず、フィジカル的にもモチベーション的にも高い高度がかかると思います。本大会前に燃え尽きるような心配はありませんか?

ブルーノ 先ほども話をしましたが、私たちの代表は18カ月間ゲームをしない期間を経て、W杯に向かう文脈に乗っています。これは私たちが望んだことではありませんが、現実としてそういう状況でW杯の準備をしないといけない。それを何らかの形で埋め合わせをする必要があります。その埋め合わせの方向性として、今、6試合と言われましたが、リトアニアに行ってからもう1試合あるので、全部で7試合組んでいます。こういうプランニングの方法は過去にほかの場所でも、複数の重要な大会でやってきていて、その効果の実例と自信が裏付けにあります。もう少し活動できる期間が、短い場合は状況が変わりますが、今回はありがたいことに、このような期間を活用できることになりましたので、もちろんマネジメントは必要ですが、うまくマネジメントをしながら、そのメリットを生かして、この試合は十分に有効性があるタイミングになると確信しています。 

FutsalX 今回の招集メンバーを見ると、最後の1枠はピヴォの競争になっていると思いますが、4選手、それぞれが今のチームに何をもたらしてくれると考えていますか?

ブルーノ 今の4名というのは、おそらく星翔太、清水和也、平田ネトアントニオマサノリ、毛利元亮の4人だと思いますが、自分としては森村孝志、そして八木聖人も、そこに入れたいと思います。森村と八木、それに星翔太もそうですが、彼らはピヴォだけではなく、アラというポジションもできる選手たちです。ゲームの状況、使うシステムの活用方法で、そこは柔軟にアクション機能を変えてくれるメンバーです。なので、一口にピヴォといっても、例えばどっしりと前でターゲットになる選手、動的に動きながらターゲットとして現れるタイプ、そのような特性を、それぞれが持っていると思います。GKに次いで、特有性の高いポジションがピヴォですから、自分としては重宝していますし、大事に考えることが強くあります。そのために、いろいろなタイプがいてほしいと思っていますし、それをやってくれていると思います。

FutsalX ベトナムではW杯初出場に導き、さらに本大会でもベスト16に入りました。その挑戦と今回は違う挑戦になると思いますが、ブルーノ監督にとって、日本を率いて迎える今回は、どのような挑戦でしょうか?

ブルーノ 端的に言うと、「主役たるにふさわしい戦いをして、行けるところまで、なるべく遠くまで、深くまで大会を進んでいく」ということです。そのための準備をするのが、今のテーマになってきますが、先ほど話した最後まで戦うと行う7試合のうち、3試合はすでに必ず戦うものとして、計画されています。そのあとは一戦ずつを、一つずつひとつずつ、毎回を勝ち切って進んでいく取り組みになりますが、それをやるにふさわしい準備を今はする。その結果、毎試合の取り組みが、結果的に私たちがW杯での主役たらしめる。そんなチャレンジを思い描いています。 

SAL 本番で対戦するスペインとも事前に試合が組まれているが、それを行うメリット、デメリットを教えてください。

ブルーノ スペイン代表とは、4カ国対抗トーナメントで対戦しますが、このトーナメントに出る打診は、ずいぶん前にあって、参加の表明をしていました。これは組み分け抽選をする前からであり、試合機会を持つことが大事ということで参加の表明をしました。そして、組み分けが出てからも、私たちはこれを維持した、守ったということで、このような状況になっています。
 本番のグループリーグでの対戦については、リスペクトもありますし、向こうも日本代表に対してそういう相手としてのリスペクトもあるでしょう。すんなりいけるかという考えも、それぞれにあったかもしれませんが、われわれとしては、この状況をポジティブに組まれたと捉えています。
 もっといえば、こうした代表チームのゲームだけでなく、たとえばリーグ戦のなかでも、リーグを戦ったチームが再びプレーオフで戦うとか、大会期間中にある代表チームが、再度上位に上がった時にもう一度戦う、複数回対戦することは珍しいことではありません。私たちとしては、事前に戦えることをポジティブに捉えて、そこで得たものを生かしてグループリーグの試合につなげたいと思っています。

フリーランス・長野 スペインの監督賞を受賞したのは、今までの活動が認められた結果だと思いますが、受賞して新たに芽生えた気持ちはありますか?

ブルーノ ありがとうございます。監督賞は、クラブチームで監督をしていた時代にも受賞していたので2回目です。この賞の選出が一般的な方々から評価をされたのではなく、指導者の仲間が評価をしあい、投票を行うものでした。その分、自分には嬉しい選出でした。
 特に今回は海外にいながら、私がスペインを離れて何年も経つのですが、そう見ている人がいるということが格別な思いです。この賞は、そういう意味合いですが、とはいえ監督としては、コレクティブな仕事が必須です。そういう点でいくと、私と一緒に仕事を実現してくれているスタッフ、こういう場所にいながら、スペインにいる家族と離れて、ここに来ている自分の家族、友達、そういった皆さんの支えがあって仕事ができています。自分としてはそういうとらえ方をしている賞を、海外にいながら、皆さんとの協働が認められたことだと喜んでいます。

フリーランス・長野 この受賞がW杯に向かうチームにもいい影響がある?

ブルーノ ポジティブな影響が直接あるかは、わかりません。チームとしては、そういうことがあろうがなかろうが、非常に高いモチベーションで準備を続けてきています。自分としては、そういう取り組みに、また色がついたという喜びが加わっています。それがチーム全体にも『そういう風に見られているチームなんだ』ととらえられているかもしれませんが、特別に何か大きくポジティブな反響が、それで生まれるとは思っていません。

スポンサーブランド
サッカー・フットサルブランド アグリナ


Homepage Powered by スタジオコンチーゴ株式会社