【インタビュー】なぜ立川・府中は、クラウドファンディングでマスコットをつくるのか? 選手会長・皆本晃

【インタビュー】なぜ立川・府中は、クラウドファンディングでマスコットをつくるのか? 選手会長・皆本晃

立川・府中アスレティックFCは7日の20時に、クラブのマスコット作成に向けたクラウドファンディングを行うことを発表した。立川・府中には、これまでクラブのマスコットがなかった。フットサルクラブの経営は決して楽ではなく、なかなかマスコットづくりに予算が回らない。

様々なスポーツクラブが集まるイベントに参加した際、クラブのキャプテンであり、選手会長でもあるFP皆本晃は、子供たちが名前の知らないアスリートよりも、親しみやすいマスコットに人が集まることに気づいたという。そして今回、皆本が中心となり、選手会主導でクラブマスコットづくりに向けたクラウドファウンディングを開始した。

選手としての活動をしながら、クラウドファウンディング開始に向けて奔走した皆本に、今回の活動について聞いた。

以下、立川・府中FP皆本晃インタビュー

――皆本選手は、AbemaTVのニシノコンサルに出演するなど、選手としての活動以外も積極的にやっていますが、今回のクラウドファンディングによるマスコット作成は、どういう経緯ですることになったのでしょうか?
皆本 ニシノコンサルに出演させてもらったとき、Fリーグやクラブのことなど、いろいろと相談させてもらいました。そのときに、『選手も選手で、もっといろいろな動きをしないといけないかな』と思いました。その中で、「クラウドファンディングで、ファンと一緒に照明を買って、もっと楽しめる空間をつくればお客さんももっと来るのでは」と指摘されました。『良い考えだな』と思ったのですが、演出に関しては今年、こだわってやっているので、何か他のモノ、これまでクラブがお金がないからあきらめていたものをやろうと思ったんです。ファン・サポーターの方々と一緒にお金を集めてやってみる。選手はもちろん、関係者、応援してくれる人、みんなで力を合わせて、クラブやFリーグを盛り上げていくのがいいのではないかと思ったのが始まりです。

――実際に「重大発表」の予告をしてからの反応はいかがでしたか?
皆本 どうなんですかね。僕らの周りでは、盛り上がっている感じはしますが、外側にどこまで発信できたかは、わからない部分があります。ただ、立川・府中はこれまで、こうしたことで内輪で盛り上がることさえなかったと思うんです。フウガドールすみださんなんかは、すごく盛り上がるイメージがありますが、うちにはそういうイメージないじゃないですか? でも今回はトップチームだけではなく、女子や他のカテゴリーの選手たち、チームスタッフも反応してくれました。これがどこまで外に広まるかわかりませんが、「こういうことをやるクラブなんだ」という新しいイメージをつくれたのは、よかったと思っています。

――以前からマスコットが気になっていたり、他クラブのマスコットを見て、何か感じることがあったりしたんですか?
皆本 今年からクラブは、新たに立川のアリーナ立川立飛を本拠地にしています。それで立川市内でイベントに出る機会もあったのですが、僕のことを知っている人なんて誰もいません。僕だって日本代表のキャプテンですし、フットサル界では知らない人はいないと思うのですが、でも、立川の街に出てしまうと、誰も知らないんです。
選手が何かやろうとしても、その選手が誰なのかを知ってもらえていなければ人は集められません。あるイベントでは、参加者がゼロ人ということもありましたからね。でも、そのときに他のスポーツ団体は、マスコットが来ていて子供を中心に、人を集めていたんです。それを目の当たりにして、マスコットの力は偉大だなと思いましたし、僕もシンプルにマスコットとかキャラクターって好きなんですよ。ディズニーランドに行っても、人が集まってくるじゃないですか? マスコットやキャラクターって人を集められると思うし、立川・府中にもマスコットがあったらいいなとは思っていました。ただ、お金がかかるので、クラブの中での優先順位はどうしても低くなってしまいます。

――リーグからは分配金もありませんし、Fリーグの各クラブの経営は決して楽ではありませんからね。
皆本 そうなんですよね。でも、将来的に回収はできると思うんです。グッズづくりをしたり、マスコットのアカウントをつくってSNSで情報発信をしたりすれば。でも、そこに初期投資できる体力がない状態です。クラブのスタッフとも、そういう話をしていたので、「みんなで何かをつくるなら、マスコットがふさわしいんじゃないかな」と思いました。愛されるマスコットになっていってほしいですし、クラウドファンディングでやって、みんなでお金を払ってつくるのがいいんじゃないかと感じました。お金を払った人は、「自分がつくったんだ」と思えるじゃないですか? 愛着のあるマスコットになると思うし、そうやって育ってほしいと思ったので、これは自分たちだけでつくるのではなく、みんなでつくるべきだなと思って、やろうと思いました。

――いろいろな人を巻き込んでいって、それぞれの「自分事」にしてもらうっていうのは、すごく大事なことですよね。
皆本 はい。マスコットが何かしていたら、「お。俺のマスコットがイベントに出たぞ」と思えると思うんです。ニシノコンサルでも「参加者になってもらったほうがいい」と、何度も言われました。いまの「自分事」っていう言葉もそうだと思うのですが、単に応援してもらう人ではなくて、参加者に、当事者になってもらって一緒につくっていく。そうすることにも、クラウドファンディングは向いているんじゃないかなと思っています。「みんなでつくった、俺たちのマスコット」になってほしいですね。そのきっかけになればいいかなと思います。

――クラウドファンディングには、どんなイメージを持っていましたか?
皆本 もともとクラウドファンディングについては、あまり詳しくは知りませんでした。やりたいことがある人がお金を集めて何かを達成するイメージで、みんなでモノを作るというイメージはなかったです。いろいろなチャレンジとか、やりたい人を応援する感じかなと。それならサポーターズクラブやファンクラブと変わらないのかなと思っていたので、モノを作るプロジェクトもできることを知ったときは、そんなこともできるのかと思いましたね。

――具体的に資金を集める期間と目標金額。その使い道はどうなっているのですか?
皆本 期間は2019年1月末日までで、最低目標金額は100万円です。この金額が集まらなければ、何もスタートしないことになります。具体的な使い道は、着ぐるみ代が50万円から60万円。それとデザイナーさんのデザイン料やその他の経費。100万円集まれば、なんとか作れるかなという感じですね。

――100万円を達成しても、期日までは続けるんですね。
皆本 はい。10万円を超えても集め続けます。正直、それで着ぐるみのクオリティが変わってくるところもあるんですよ(笑)。また、作った後もランニングコストはかかります。イベントに連れて行ったり、いろいろなことをするとなると。なので目標は100万円にしていますが、集まるだけ集めたい。たくさん集まれば集まるほど、いろいろなイベントにも参加できると思います。

――資金提供者にはいろいろなリターンもありますね。一番高額なのが10万円で、渡邉知晃選手の講演会の権利を買えると。先日、どこかでやった講演会は大好評だったそうですね。
皆本 選手会でやるクラウドファンディングなので、選手たちには全面的に協力してもらっています。マスコットの撮影権、マスコットのキーホルダーとか、そういうものもありますが、選手と触れ合う機会をリターンで提供したいなというのもありました。トップチームの選手たちはクリニック、食事会、映像分析、講演会、それぞれ何かしらやろうということで、幅広いリターンを用意しています。

――その中でもオススメのリターンは何ですか?
皆本 100年に一度の逸材 丸山将輝選手とマンツーマンで筋トレ。3万円のコースですね。売れるかなぁ(笑)。普通の優秀なパーソナルトレーナーでも、なかなか3万円はしませんからね。この商品が売れたら、大騒ぎしてください(笑)。でも、こういうところから次につながっていくのもいいと思うし、後々はイベントになればいい。丸山は筋肉が本当にすごいですし、ここからスポーツジムやプロテインのスポンサーがつくとか、広告塔になるとか。ファンと触れ合う機会にもなりますしね。売上金に関しては、それこそ渡邉の講演会が売れても、彼には1円も入らないんですけど(笑)、その活動をすることで選手が得るものというのもあると思います。

――告知をしていくことも大事になってきます。重大発表のときは、全員が同じ文言と画像で発表しましたが、そこにはどんな意図があったのでしょうか?
皆本 みんながバラバラに告知するのもありだけど、統一しようとしました。あえて同じものを、この文章と、この画像を出してねと20時ぴったりに出す。クラブの公式アカウントも、選手のアカウントも、気持ち悪いくらいにそろえて(笑)。そうするとアスレファンは何個も同じものを見るわけです。

――全員で何かをやるんだというインパクトを与えたかったんですね。
皆本 そうです。だから変にアレンジはしないで統一しようとしていました。バラバラなものを全員に書いてもらおうとなると、同じタイミングで出すのが難しくなります。どうしても同じ時間に発信してインパクトを与えたかったので、あの方法をとりましだ。

――その後、選手たちは「#アスレなんかやるってよ」のハッシュタグで、いろいろと発信していましたが、あれは自主的なものですか?
皆本 はい。若手には「1日に一つくらい書けよ」と言っていました。でも、クラブのライングループではもっと面白いのも出ていたのですが、みんなビビッて表には出しませんでしたね(笑)。「おまえら、ビビってんじゃねーよ」って書いたんですけどね。唯一、飛騨くんだけが暴走したのは、予想外でした (笑)。

――新マスコットについて、デザイナーは決まっているんですか?
皆本 イラストレーターのリオタさんですね。何人かデザイナーさんをリストアップしてもらって、作品を見せてもらった中で、僕が絵を見て決めました。彼がどんな「馬」を描いてくれるか楽しみですし、そのためにも何とかして資金を集めないといけませんね。

――馬以外の案はなかったねすか?
皆本 そうですね。エンブレムにも、馬が入っていますからね。絶対にイヤだったのは、この世にないものをマスコットにすることです。今回、かなりの数の『ゆるキャラ』を調べたのですが、やっぱり人気になっているのって、動物がモチーフになっているものが多いんですよ。その一方で、この世にないものをモチーフにしたものは、結構な事故になっているというか(笑)。立川・府中といえば、馬なので、馬でお願いしたいと思います。

――お披露目はいつを予定しているのですか?
皆本 来季の新体制発表会ですね。着ぐるみをつくるのにも、数か月かかるので、結構、時間がないんですよ。デザインが決まらないと、その発注もできません。100万円が集まったら、すぐにリオタさんにデザインを依頼して、そこから進めていきたいと思います。

――クラブとともに未来永劫あり続けるであろうマスコット。こうして選手たち主体でつくっていくのは、どんな感覚ですか?
皆本 今までやったことがなかったから、面白いですよね。クラブの人はもちろん、、いろいろな人を巻き込みながらやるのは、大変だけど、面白かったです。本当に、業者とのやり取りも、クラウドファンディングのページ作りも、告知の準備も、これにかかわることのほぼすべてに関わっているので(笑)。

――マスコットとは、どんな活動をしていきたいですか?
皆本 まずはクラブのPRイベントですね。まだまだ立川の人たちには知られていません。マスコットと一緒に、覚えてもらいたいです。また、府中にもイベントで行くので、そのときに「アスレにもマスコットができたんだ」と、思い出してもらって、忘れないでもらうきっかけにしたいです。選手の等身大のボードもいいですが、やっぱりマスコットの方が、みんなが一緒に写真を撮ってくれると思うし、盛り上がると思うんですよね。

――ここまでイメージができていたら、あとはしっかりお金を集めるだけですね。
皆本 いや、もう一つ大事な仕事があるんですよ。実は、クラウドファンディングの開始を、このタイミングで発表したのは理由があるんです。クラウンドファンディングというのは、初日でいくら集まるかが本当に大事なんだそうです。初日に目標金額の30%を集めることができれば、成功率は88%ある。でも、30%に届かなかった場合、その成功率は30%まで落ちるというのです。

――そんなに違うんですね。それと今日、発表にしたのはどういう関係があるんですか?
皆本 明日、僕たちはアリーナ立川立飛で、ホームゲームがあります。そこでアピールをしたかったんですよね。

――なるほど。ホームゲームの会場で告知をすると。
皆本 はい。そこでアピールすることが、一番の宣伝になると思いました。入り口で配るマッチデープログラムにもQRコードを張って、会場にもQRコードを置きますが、それだけでは足りませんよね。だから僕の役割は、明日の試合で点を取って、立川・府中を勝たせてヒーローインタビューをしてもらうことです。そのヒーローインタビューで、「みなさん、携帯を出してください! いまクラウドファンディングを始めました! みなさん何か買ってください!」と、アピールします。

――明日の対戦相手は……大阪! これはハードルが高い!
皆本 (笑)。自分でも対戦カードを見て『大阪かぁ』と思いましたが、100万円集めるなら、それくらいやらないといけませんし、そもそも普通のことですよ。自分が点を取って、チームを勝たせるというのは。それが、自分の責任だと思っているので。自分にプレッシャーをかけたいので、「皆本は点を取って、クラウドファンディングの告知をしたいらしい」と、広めておいてください。負けたら、何も言えないのでね。発信する場がなくなってしまうので、頑張ります!

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