【U20日本代表】「サッカーとフットサルの融合」に取り組み、U-20日本をアジア王者に導いた鈴木隆二監督が退任の挨拶

【U20日本代表】「サッカーとフットサルの融合」に取り組み、U-20日本をアジア王者に導いた鈴木隆二監督が退任の挨拶

 日本サッカー協会(JFA)は17日、鈴木隆二監督がU-20フットサル日本代表監督を退任することを発表した。後任には、現女子フットサル日本代表監督を務める木暮賢一郎氏が就任する。

 鈴木氏は2016年8月にU-20日本代表監督に就任すると、2017年にタイで開催されたAFC U-20フットサル選手権ではチームをベスト8に導いた。今年、イランのタブリーズで開催されたAFC U-20フットサル選手権では、見事に日本をアジア制覇に導いている。

 鈴木氏はフットサルの年代別代表の監督でありながら、サッカーの育成年代の現場にも視察に訪れ、選手たちをスカウティングし、指導者たちとも交流を持ち、U-20フットサル日本代表活動への参加を呼び掛けるなど、サッカーとフットサルをつなぐ点でも大きな役割を果たしていた。

 その結果が、2019年のAFC U-20フットサル選手権制覇にもつながっている。

 退任にあたって鈴木氏は、JFAの公式HPに2400文字を超える長文を寄稿した。 

以下、JFA掲載の鈴木隆二氏のコメント全文

「2016年8月にU20フットサル日本代表監督に就任し、3年間務めさせていただきました。

 これまで、力を出し尽くしてくれたU-20フットサル日本代表の選手、コーチングスタッフ、様々な場面でご支援、ご尽力くださったすべての関係者の方々に心より感謝申し上げます。また、選手たちへ激励のメッセージをくださったサポーターの皆様やAFC U-20フットサル選手権タイ2017の選手の皆様にも厚く御礼申しあげます。皆さまの応援が選手を励まし、大きな力となりました。

 この間、アジア制覇を目標に活動してまいりました。AFC U-20フットサル選手権タイ2017ではベスト8、AFC U-20フットサル選手権イラン2019においては、イランの地で、タジキスタン代表、ベトナム代表、イラク代表、イラン代表、アフガニスタン代表と対戦し、全ての試合に勝利をおさめることができ、悲願であるアジアチャンピオンとなることができました。

 退任にあたり、様々な方々にご支援いただきながら進めてきた取り組みの概略をふりかえり御礼にかえさせていただきます。10代後半の約4年間、ブラジルにサッカー留学をしていました。そこで天才としか思えないような選手と出会い一緒にプレーをする中で、どうやったら日本がサッカー強豪国に勝つことができるようになるのか、真剣に考えるようになりました。それ以来、日本独自の方法を見出すしかないと思うに至りました。それには団体ボール競技の核をしっかりと捉える必要がある。それができれば、日本人の特徴や価値観と融合させ、独自のモデルを創りあげることができるはずだ。そう考えながら、スペインで7年間、フットサルの選手生活、監督の経験を積ませていただきました。そして、「いつの日か日本のフットサル界の強化育成に貢献したい」と思うようになりました。

 日本サッカー協会からオファーをいただいた時は、カタルーニャ州選抜のコーチングスタッフ、クラブのトップチーム監督、育成年代監督・コーディネーターなどのプロジェクトを任されていた時期でした。「このまま日本に帰国をしていいのか。もっとスペインでやるべきことがあるのではないか」と迷っていたところ、カタルーニャ州フットサル協会の会長が「何のためにスペインに来たのか?日本のフットサル発展に貢献するためではないのか。今そのチャンスが来た。お前にはその準備はできている」と、背中を強く押してくれました。迷いがふっきれ強い決意を持って日本に戻って来ることが出来ました。

 帰国後、日本とスペイン、ブラジルの強化育成の環境や現状を比較し、日本が発展するためには、日本独自の取り組みが必要だと強く感じ、U-20フットサル日本代表における日本独自の「サッカーとフットサルの融合」の具体的なプロジェクトをスタートさせました。

 また、U-20世代の選手達には、フットサルの強豪国が育成年代から時間を掛け取り組み養っている「戦術メモリー」と「競争力」をどのようにして伝え、ピッチ内で表現できるところまで導くことができるか。また、日本人の主体性と集団力を最大限に発揮しながらどれだけ競技力を向上できるかを、工夫しながらアプローチに努めてきました。一つは、選手全員が出場する3セット構成としたことです。二つには、キャプテンを4人体制とし、選手一人ひとりが「自分のチーム」と思って行動を起こすことができるよう配慮しました。また、次の3つのフィロソフィーをチーム作りの土台に据え、常に選手たちに伝え続けてきました。 

1)「前のめりの姿勢」
最も重視してきました。試合は常に激しく状況が変化します。厳しい状況に置かれても動揺せずに前のめりの姿勢でいないといけないということです。育成年代の指導では何よりも大切にしてきました。 

2)「シンクロすること」
フットサルはピッチが狭く、試合中に考える余裕がありません。直感的、反射的にプレーすることがほとんどです。ですからお互いの個性と特徴を理解し、瞬時に味方と同調できるようになる、そういうレベルまでコンビネーションを上げていくことが大事です。その意味で「シンクロすること」を求めてきました。 

3)「ファミリーになる」
人間にとって感情や意思というのはとても大切で、それをチームメートに伝えることはチームにとって欠かすことができません。伝えるだけではなく相手からも受け取ることができる関係を互いに身につけていかないといけません。お互い納得して終わらない場合があります。そういう場合にも「いくら喧嘩をしても構わない。言い合いをしても構わない。その時にお互いが納得しなくても構わない。ただ、君たちはファミリーだから、どんな問題が生じても必ず元に戻ることのできるチームだ」と伝えてきました。

 それらの取り組みの結果、AFC U-20フットサル選手権イラン2019に出場した選手全員が(キーパーを含む)得点を取り優勝・フェアプレー賞・MVPの3冠を取ることができました。一人のキーパーだけは出場機会がありませんでしたが、彼はチームキャプテンの1人として率先してチームフィロソフィーを貫徹してくれました。彼のリーダーシップによってチームがどれだけ成長できたか計り知れません。悲願であったアジアチャンピオンとなることができたのは、多くの方々からのご理解とご支援をうけて、選手、コーチングスタッフが一体となることができたことの結果です。本当にありがとうございました。

 現在はフットサル日本代表コーチとして、日本フットサル界の最大プロジェクトであるFIFAワールドカップ予選に集中しています。ブルーノ監督の下、FIFAワールドカップの出場を目指し、ワールドカップベスト16を超える結果を残すため力を尽くしているところです。これまでU-20フットサル日本代表のプロジェクトにご支援くださった皆様には、引きつづき日本フットサルの発展と第3回AFC U-20フットサル選手権にむけたプロジェクトにご支援くださいますようお願い申し上げて、退任の挨拶とさせていただきます。」

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